映画ブログを取り上げるとは、面白い。
原田マハさんの『キネマの神様』を読みました。映画が近々上映されるようで、何かと話題の作品ですね。
作品内では、映画が何作か紹介されていて、映画好きな方なら話が分かりそうです。
ひとまず、映画鑑賞素人、読書素人並みの感想を残します。
『キネマの神様』書誌情報
- 2011年5月10日 第1刷
- 2020年1月20日 第31刷
- 著者:原田マハ
- 発行所:文藝春秋
あらすじ
39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。〝映画の神様〟が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。
『キネマの神様』裏表紙より
印象に残った箇所
気になったところや印象に残ったところを書きまする。
「キネマの神様」に、毎日祈ってるから、って(p.36)
『キネマの神様』で初めて原田マハさんの著書を読んだのですが、その後『旅屋おかえり』も読みました。2作しか読んでないので著者の傾向は分からないですが、少なくとも2作ともタイトル回収が割と早いな、という印象でした。あ、もう出てくるんだ、みたいな。
私自身は、身内の寝言が公にされてしまった、と当初は気恥ずかしく思っていた。(p.175)
寝言と聞いて、私も寝言を垂れ流している身ですが、とてもゴウの足元にも及ばず恥ずかしい次第です。読めばわかりますが、ゴウの文章が寝言であるならば、その辺に転がっているブログは私含めて一体何と表現すればいいのかと思ってしまいます。批評ではないにしろ、一つ一つの映画の見どころや考察を自身の視点で巧みに表現するゴウは、キネマの神様の使徒にふさわしいと思えます。
書いている人が原田さんだからなのはわかりますが、私もゴウのように、自分の言葉で、自分の視点で作品の話ができるようになりたいです。そうなるためには、たくさんの作品に触れて、たくさんの経験を積んでいくことが大事なのだろうなと思うのですが、果たしてゴウのような読ませる文章に到達することはあるのか。。。
メモ
面白く読んでいた『キネマの神様』ですが、案外付箋を貼った箇所は少なく、どちらかといえば映画タイトルの知識を拾っていった感じでした。
作中に出てくる映画についてはタイトルを見ても全然観たことがないなと思うモノばかりでした。読後、「ローマの休日」「ニューシネマパラダイス」だけは観たのですが、「ローマの休日」はあまりに有名で「パプリカ」を観た時にもオマージュが入っていたのもあって、教養として観ておいてよかったなと思いました。「ニューシネマパラダイス」に関しては、自身が若いのもあって、あの過去を回想するような作風にはまだときめきませんでした。おそらく、年齢を重ねたほうがグッとくる部類だろうと思っています。
映画や劇場に関する知識が豊富に取り扱われている印象を受けましたが、それに加えてゴウとローズ・バッドのブログのやり取りが面白かったです。
ゴウは言わずもがな素人ですが、ローズ・バッドは正体不明ながらプロの批評じみた文章でやり合うので、ブログ読者たちが二人のやり取りに夢中になっていく流れも納得。「映友」編集部が読んでもプロとしか思えない文章に、毎度コテンパンにやられながらもなんとか張り合えているゴウもすごい。
この二人のやり取りは是非文章で読んで欲しいのですが、他のシーンを考えると映画との相性も悪くないように思いました。近々、映画が上映されるはずですから、観に行こうかなと。
まとめ
映画の話が分かるほうが当然面白いが、わからなくても新しいことが知れるので良し。
ゴウとローズ・バッドのブログでのやり合いが非常に読みごたえがあったので、これは本で読んで欲しい部分。
以上が『キネマの神様』の印象です。映画化されましたが、作中でブログを取り扱っている以上、文章をじっくり読んだほうがより『キネマの神様』を味わえると思います。もちろん、映画も雰囲気のあるものになっていると期待しています。
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