【感想】『第2図書係補佐』又吉直樹著:独特な世界観と過去が垣間見えるエッセイ(+α本紹介)

書評
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本紹介が目当てで買った本ですが、読んでみると又吉さんの過去話や考えなどがたくさん。どうやら本書はエッセイに分類されるようです。

又吉さんおすすめの本に纏わる思い出が、彼の独特な世界観と考えを交えながら語られるのが、本書の面白い点。ずっと読んでいたくなるような文章で、ぐんぐんと読み進めてしまいました。

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『第2図書係補佐』書誌情報

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  • 平成23年11月25日 初版発行
  • 平成27年7月25日 19版発行
  • 著者:又吉直樹
  • 発行所:幻冬舎

あらすじ

僕の役割は本の解説や批評ではありません。(略)自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました――(本書はじめにより)。お笑い界きっての本読み、ピース又吉が尾崎放哉、太宰治、江戸川乱歩などの作品紹介を通して自身を綴る、胸を揺さぶられるパーソナル・エッセイ集。巻末には芥川賞作家・中村文則氏との対談も収載。

『第2図書係補佐』裏表紙より

印象に残った箇所

本の紹介よりも又吉さんの表現が気に入ってしまいました。気になった箇所を残しておきます。

ただの穀潰し甲斐性無しヘタレの阿呆ボン(p.23)

直球の悪口で笑いました。ただ、ここで紹介されている『夫婦善哉』は、そのヘタレの阿呆ボンにムカついてしまいそうで、読むのは心に余裕ができてからにしようと思いました。

 

思春期は前世の記憶を失って生まれて来る人間達のために何かしなければならないという焦燥を誘発し使命を思い出させる起爆剤としての役目がある(p.55)

これは又吉さんが書き溜めたノートに書かれていた文章の一部です。世界のシステムについて、又吉さんが考えたことがたくさん書かれているらしく、思春期についても考えを書き留めていたそう。

なるほど、確かに思春期は自己の進路や生き方を決定する1つのターニングポイントとして扱われることも多いですし、もし前世なるものがあって、一人ひとりが役割を背負っているのであれば、それを思い出すのは思春期になるかもしれないですね。実際は、なかなかやりたいこともやるべきことも定められずに彷徨ってしまうのですが、思春期のモヤモヤを納得するための一つの考え方としては良いかな、と思いました。

 

小説の楽しみ方は色々とあるが、僕が文学に求める重要な要素の一つが、普段から漠然と感じてはいるが複雑過ぎて言葉に出来なかったり、細か過ぎて把握しきれなかったり、スケールが大き過ぎて捉えきれないような感覚が的確な言葉に変えて抽出されることである(p.149)

あぁ、そうだなと思いました。何も読まずに自身の感情を細かく理解するにはあまりにも語彙が足りないのです。そして、語彙が豊富にあったとしても表現が出来なければ理解も出来まい。

小説を読むことは無駄みたいに言われることもありますが、では小説を読まずに自身の心理や感覚を的確に表せますか、と問いたいですね。嬉しい楽しい悲しいだけじゃないんですよね、心って。

 

だが、コーヒーを飲むことによって僕は、「コーヒーを買い飲んでいる人」という名前が貰える。コーヒーを買う行為は僕と世の中を結ぶ方法の一つだった(p.167)

この文章が一番お気に入りです。なんかうまくいっていない、何も生み出せていないときって何かしなきゃと焦ることがあって、そんなときにただ徘徊しているとバツの悪い感覚に陥ったりします。でも、自販機でコーヒーを買えば、「コーヒーを買い飲んでいる人」になれる。なるほど。ちょっと宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を思い出しました。推しを推しているときだけ社会とのつながりがある。

読みたい本

本書で紹介されていて、特に読みたいと思った本。忘れそうなのでメモ。

  1. 『昔日の客』関口良雄
  2. 『杳子・妻隠』古井由吉
  3. 『炎上する君』西加奈子
  4. 『何もかも憂鬱な夜に』中村文則
  5. 『高円寺純情商店街』ねじめ正一
  6. 『巷説百物語』京極夏彦
  7. 『江戸川乱歩傑作選』江戸川乱歩
  8. 『李陵・山月記』中島敦
  9. 『コインロッカー・ベイビーズ』村上龍
  10. 『逃亡くそたわけ』絲山秋子
  11. 『異邦人』カミュ

多いですけど、本書には他にもたくさん紹介されているのでぜひ読みましょう。

まとめ

本の紹介ももちろん参考にしますが、それよりも又吉さんのエッセイってこんなに面白いんだ……と思った一冊でした。同じく又吉さんが出している『東京百景』も読みたい。

読後感の良いエッセイを探していたら、『第2図書係補佐』は結構おすすめです。

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