【感想】『ここで死神から残念なお知らせです。』榎田ユウリ著:死んだことに気づかないまま生きてしまう人々

書評
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小説『ここで死神から残念なお知らせです。』を読み切りました。257ページある本作は、死神が死者からサインをもらう業務を中心に話が進んでいきます。

内容を忘れないうちに、紹介と感想を書き残しておきます。

読んだことのない人のためにさらっと作品概要に触れ、それ以降はがっつり作品の感想なので読んだ人向けの内容になっています。

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『ここで死神から残念なお知らせです。』書誌情報

  • 平成27年1月1日 発行
  • 平成30年8月25日 10刷
  • 著者:榎田ユウリ
  • 発行所:新潮社

あらすじ

「私、死んでいるの?」
「はい。ご愁傷様です」

梶真琴が、喫茶店で耳にした不可解な会話。それは、保険外交員風の男が老婦人に契約書のサインを求めている光景だった。男は、死んだことに気づかぬ人間を説得する「死神」だと宣う。漫画家志望で引きこもりの梶は、なかば強引に死神業を手伝わされることに。最期を迎えた人々を問答無用であの世へ送る、空前絶後、死神お仕事小説!――あなたは、死んでいないと言い切れますか?

出典:「ここで死神から残念なお知らせです。」裏表紙

感想

ここからは、なんとなくネタバレがあるので、そういうのが大丈夫な方のみ閲覧してくださいね。

死神に振り回される主人公

コミュ障・引きこもり・無職。

本作の主人公、インパクトありますよね。

しかし、現代においてコミュ障・引きこもり・無職というコンボはそんなに珍しいものではなく、やけに現実味があるのが怖いですね。私もコミュ障・引きこもりはクリアしているので、あとは無職になれば主人公と同類になれます。

それに対して死神はものすごく活発で、読んでいて元気が吸い取られるような気持になりました。主人公とシンクロしてます。

そんな死神に振り回される主人公は、さぞ大変だったろうなと思います。しかし、主人公の人生において、こんなにもコミュニケーションをとったり考えたりする日は久しぶりであり、決して悪いものではなかったのではないかと思います。

何故なら、人と接しない生活なんて、自分が本当に人間なのかわからなくなりそうですし、自分の発言に対して他人から返答がくるってだけでも案外幸せなものなんじゃないかと私は思っているからです。

それに、他者とのかかわりを避けて無関心を貫いてきた主人公が、他人の感情に興味をもったり同情したりすることができるようになったのは、ものすごい成長です。

人生最後に、めちゃくちゃいい経験したんじゃないかと思いました。

何故、主人公が目をつけられたのか

はじめは気にしていなかったのですが、物語を読み進めていくうちに、なぜ梶さんだったんだろうと思うようになりました。コミュ障・引きこもり・無職の梶さんよりも、アシスタントとして優秀な人なんてたくさんいます。

梶さんが死神のセールストークを聞いてしまったからなのかとも思ったのですが、なんかそれだけじゃないような気がしてしまって。

いろんなことを考えた結果、梶さんの死期が近いから死神は梶さんを傍においていたのでは?と予想しました。

が、終盤でびっくりしました。

そういうことだったのか

梶さんの死期が近いのでは~なんて述べましたが、惜しかったです。既に亡くなっていたとは驚きです。(合ってるか不安ですが)言われてみれば、序盤で死神の名刺を触っていなかったんだなあと合点しました。

梶さんが死神と別れて、メロンパンを奪われて眠くて寝ちゃったあたりで、そろそろ亡くなるのかとそわそわしていたのですが、見当違い。

でも惜しかった……ニルバーナで死神と出会ったときからそうだったとは。「味のしないみかん」とかいろいろ伏線もあったようですが、私も梶さん同様全スルーです。疎いな~

しかも、驚きはこれだけじゃありませんでした。

作品の中の作品だった?!

いい感じで梶さんが納得して眠ったと思いきや、ありゃ、梶さんの作品だったとは。高橋さんが編集のお仕事で、梶さんがマンガ家。最初は死後の世界なんじゃないかと思ったくらいです。

しかしまあ、一所懸命にマンガのネームを描く梶さんですが、どうやら難治の病で入院中でもしや…と思いました。

もしや。そうです、こっちの梶さんも亡くなるのでは?と思いました。

その後、高橋さんが梶さんのネームを持って編集社に向かう途中、余見のような人物が現れます。梶さん、出版には間に合わないんでしょうね……。

とはいえ、こっちの梶さんは何作か作品を創っており、何も果たすことのできなかった梶さんとは状況が違います。いくらかの救いがあるような。

それにしても、もしかしたら梶さんは死期が近いのを悟ってそのような作品を創ったのでしょうか。自分の名前を主人公にして、死神のアシスタントをやらせ、さらには亡くなる……。

もしくは、その作品の中の梶さんと、作者の梶さんは実は同一人物で、死期が近づいて前世の記憶が薄っすら蘇って作品にした、とか。ないですかね。

どっちでもいいんですけど、それよりもこの作品から学んだことをまとめて終わろうと思います。

やりたいことはやっておきたい

この作品を読んで思ったことは、「やりたいことはすぐにやるべき」ということです。

先延ばし。作中の梶さんの先延ばしはものすごいレベルでしたよね。漫画家志望でありながら、何かと言い訳をつくって挑戦しないまま、何も創らないまま終わってしまいました。

梶さんでなくても、誰でも先延ばしにすることはあるかと思います。明日やればいいや……と。

それでも、夢や目標があるならば、自分がやりたいことならば、その時々にやっておく・進めておくことは大切だなあと。課題とか、仕事とかやる“べき”ことはたくさんありますが、まあ、最悪それらを放っておいても、怒られるか無職になるか程度で死ぬわけではないんですよね。怒られるのはもちろん嫌ですが、死と天秤にかけると大したことないなあ、と思います。だから、やりたいことがあるなら、元気なうちにやってしまいたいな、と。

私は2018年にこのブログをはじめました。何故はじめたかと言うと、漠然と「このままじゃ嫌だ」と思ったことがきっかけです。

今までも趣味はあって、いろいろやってきたはずなんですけれど、いまいち何も手元に残っていないような気がして不安になりました。だから、記録を残すことで、何をしてきたのか、何をしたいのかを明確にしたいと思いました。それに、形にすることでやる気も出てくるんじゃないかなあと。

そうして、現在の「ねこどんの寝言。」という当ブログが出来上がりました。

いくらやりたいことをやってみようとしても、やり残しは出来るし失敗もするしで、必ず後悔はすると思いますが、それでもやらないよりはやったほうが納得できるんじゃないかと思う次第です。

2019年も、いつ「死神」が来てもいいように、できるだけ悔いのないようにやりたい放題したいなと思います。

まとめ

死神が営業してまわるなんて、私は考えもしなかったのでとても楽しく読めました。が、色々と考えることも多く、多くの人に読んでもらいたい作品だなと思いました。

実は、『ここで死神から残念なお知らせです。』は、続編があるので、そちらも今後時間を作って読みたいなと思っています。純粋に死神がアレコレしているのは面白いですし、きっとまた、考える材料をくれるような気がしています。


文章も難しくないので、若い人にも読みやすいだろうと思います。

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