アニメ「クズの本懐」を見た感想:誰にでもある感情を拗らせた人たち

アニメ
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一年前くらいに書店で立ち読みをして、気になっていた「クズの本懐」。

そのアニメをPrime Videoで見たので、感想をつづろうと思います。

なかなか過激な描写が多いので、万人におすすめはできないのですが、登場人物の心情を語る場面が多く、考えさせられました。

ある程度精神的に落ち着いていて、性に関する描写があっても不快に思わない人には一度見てもらいたい作品です。

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クズの本懐という作品の概要

「クズの本懐」は、原作はマンガで、アニメ化された作品です。

原作情報
著者:横槍メンゴ
掲載:月刊「ビッグガンガン」(スクウェア・エニックス刊)
コミックス定価:1~7巻各562円(税別) 8巻通常版581円(税別)
ファンブック定価:857円(税別)
出典:TVアニメ「クズの本懐」オフィシャルサイト

コミックスは既に完結しており、全8巻です。

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物語の大まかな内容は、下記のようになっています。

主人公「安楽岡花火」は、幼い頃から親しくしていた「鐘井鳴海」に恋心を抱いていた。しかし、鐘井は同僚の音楽教師「皆川茜」に惚れていた。花火は思いが叶わない寂しさから、同じような状況の「粟屋麦」と同盟を組み、偽りのカップルとして寂しさを埋めるようになる。そこからの展開を描いた作品。

上記の人物のほかにも、花火のことが好きな女の子「絵鳩早苗」(えっちゃん)、麦のことが好きな幼馴染の「鴎端のり子」(自称”最可”)という人物も登場します。

花火と麦を中心に、鐘井・茜・えっちゃん・最可といった人物の心情が描かれています。

一言でいえば、昼ドラに近い泥沼ストーリーが特徴的な作品です。

好きな人に振り向いてもらえない二人

物語の概要を説明する際に、花火と麦には好きな人がいて、しかもそれが叶わないものだと述べました。叶わないということは、本人たちの語りや相手の様子からもすぐにわかるでしょう。ということは、物語の本質は、恋が叶うかどうかではないようです。

じゃあ、何を描いた作品なのか。

私は、登場人物の擦れっぷり(クズさ加減)・そこから脱出するまでを描いた作品だと思います。物語序盤の麦と花火は、それはもうどうしようもないことばかりして、本気で好きな人に向き合えずに傷をなめ合う二人でしたが、周辺人物との接触を通して成長していきます。

そうです、花火と麦は好きな人に思いを伝えることができないまま、互いのどうしようもない寂しさを埋め合おうとしたのです。互いを好きな人の代わりにしようとしたのです。

しかしまあ、皮肉なことに、何度もお互いを頼っていくうちに相手のことを「代わり」にできなくなるんですよね。情がわいてしまったといいますか、一人の人間として見るようになったわけです。

それで私は、てっきり花火と麦が本当にカップルになるのだと思ったのですが、どうもそれは二人が求めているものではありませんでした。

弱る花火に翻弄されるえっちゃん

花火のことが好きな女の子「えっちゃん」ですが、彼女もまた自暴自棄に近い状態になってしまいました。

原因は、好きな人を取られた花火が、寂しさのあまり、えっちゃんを代わりにしてしまったことです。正確に言えば、花火の前で抑制が効かなくなったえっちゃんを弱っていた花火は拒まずに、えっちゃんのなすがままにさせてしまったんです。

そこからはもう、えっちゃん苦しさ爆発です。

中途半端に近づけると逆に苦しいんですよね、たぶん。圧倒的に叶わない夢だと近寄れなくても大して苦しくないんですけれど、手が届きそうで届かない距離は半殺し状態です。

夢とか目標とかも近いものがあるのではないでしょうか?

頑張ればできそうなことなのになぜかできない…とか、あと少しで達成できそうなのにそれ以上は先に進めない…とか、もやもやしますし、納得いかないんじゃないかと。

恋愛の場合は相手の好意は操作できませんから、夢や目標よりも難しい状況だとは思います。

それにしても、ここまで花火もえっちゃんも女の子であることをスルーしてきましたが、これはいわゆる百合というものです。

私は、そういうのは当人同士が良ければ何でもいいと思っているのですが、今回の場合は花火はえっちゃんのことを半端に受け入れているけれど、本当は友達でいたいんですよね。

花火にとってえっちゃんは数少ない友達だそうで、彼女を失いたくないみたいです。

でもそれもまたえっちゃんにとっては酷な話で、それって好きな人を諦めて友達でいなきゃならないという状況です。要は好きな人と近しい仲でも一切手出しできないということですよね。

既にいろいろしちゃっているけど、それは置いといて…花火はえっちゃんのことを友達として大切に思っているんですね。ある意味えっちゃんは花火にとって特別ですが、苦しいですね。

思ったほど「化け物」ではなかった音楽教師

この物語で特にインパクトのある人物は、音楽教師「皆川茜」です。

彼女は男にちやほやされることに快感を得るようで、男ありきの人間です。しかも、人が思っている男性を奪うことが非常に快感だそうで、その事実を知った時にはこりゃまずい人きたなあと思いました。

しかし、話を重ねていくうちに、この人大したことないなと思うようになりました。

なぜならこの人は、自分に寄って来る男性を通して自分の評価を見ていたに過ぎないのです。つまり、自分の評価を他人に依存していただけです。

男が寄ってくる自分、他の女から男を奪う自分にしか存在価値を見出せないなんて、上手に思春期を過ごせなかったんだなと気の毒に思います。作中でも麦が言っていましたが、茜は子どものままなんです。

だから、「化け物」というレベルではなかったのです。

うーん、正直もっとやばい人が登場してほしかったんですよね。でもそんなことしたら話は綺麗に終わらなかっただろうし、作者的にはこれが良かったんでしょう。

この作品では、登場人物が前を向いて歩いていくように終わらせたかったのでしょうね。

それに、皆川茜のクズっぷりと、後にわかる本当に得たかったものを得るストーリーから、実は茜こそ「クズの本懐」に相応しい人物なんじゃないかと思います。

鐘井先生はお母さんを重ねているだけ?

一人だけ、ずっと前を向いているような、後ろを向いているような人物がいます。

それは、「鐘井鳴海」です。

彼は、幼い頃に母親を亡くしており、その母親を茜に重ねていたような描写がありました。

だから私は、鐘井先生ってほんわかしていて優しいけれど、どこか悲しげな印象があったんですよね。

鐘井先生は茜に、「好きな人にはただ元気に笑っていてほしい」みたいなことを言っていましたが、それは亡き母が元気に笑っていられなかったからなんだろうなあ、と。

しかし、その思いからくる寛容さが素の茜を受け入れることで茜に変化を与え、なんとかやっていけるのであれば、それでもいいのかと思いました。鐘井先生に対してはあまり深堀できません。作中の心理描写が少なかったですし。

わかっていた失恋

はじめからわかっていたけど、それでもちゃんとぶつかっていくのってすごいことだなあと思います。

花火と麦、それぞれがそれぞれの思いの丈をぶつけるシーンは、正直辛かったです。

ああ、これから振られるんだよなあ…とか、麦に関しては元の茜のままだったらコマにされて捨てられるだけだと思っていたので、かなりひやひやしました。

花火は想像通り、麦はちょっと予想外の終わり方をしましたが、結局二人とも同じ結末です。

でも、そんなことは最初からわかっていたのだから、それに立ち向かっていったのは本当に頑張ったなあと思いました。振られるのが分かった状態で思いを伝えるのって、絶対勇気がいりますもんね。

しかもそこから、ちゃんと前を向き始めたのは、最可が影響している気がします。特に花火には。

最可は一足先に、片思いから抜け出しましたからね。自分の力で手に入れた購買のパンを美味しく食していました。文化祭でファッションショーをして、人一倍脚光を浴びていました。

そういう最可を見て、花火も思うところがあったんじゃないかと。言及はされていませんでしたが、最可を見てハッとする花火を何度か見た気がします。

個人的に最可が好きなんですよね。あの「うざあざとい」けど、比較的まっすぐなところが素敵です。

まとめ:美男美女ばかりだけど学ぶところはある

唯一、難癖をつけるとしたら、美男美女ばっかりなんですよね、この作品の主要人物は。

でも、美男美女だからといって普通の人間からかけ離れた考え方をするわけではないですし、彼らだって自分の人生を必死に生きているのだから何かしら学ぶ部分はありました。

片思いとの決別の仕方とか、誰かを好きな人の代わりにしようものならやっかいなことになることとか。そういうことを学びました。

嫉妬や恋心、優越感に支配されるとどうなるのか。

それを教えてくれるのが、「クズの本懐」なんじゃないかなあと思います。

最後に、「クズの本懐」の「本懐」という言葉について述べて締めたいと思います。

本懐とは、

もとから抱いている願い。本来の希望。本意。本望。「本懐を遂げる」
出典:コトバンク

作中主要人物のそれぞれが遂げたもの、それは本懐であり、本作品は本懐を遂げるまでの過程を見せてくれたのでした。

 

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