映画「STAND BY ME ドラえもん」の感想:のぶ代ドラが好きな人は感動の押し付けに気持ち悪く思うかも

映画
スポンサーリンク

子ども時代はのぶ代ドラとともに過ごしました。

ドラえもんの保護者のような雰囲気が大好きで、少しだるそうなんだけどなんだかんだのび太君に付き合ってくれる面倒見の良さが懐かしいです。

最近は、わさびさん演じるドラえもんですが、それはそれでのび太君と一緒にぎゃあぎゃあ騒ぐにぎやかさが、対等な友達のようでいいな、と思います。

さて、映画「STAND BY ME ドラえもん」を観ました。

Amazonプライムビデオでのレビューは散々でしたが、Filmarksという映画レビューサイトではそこそこ良い評価。

ですが、私的には言いたいことがいろいろあるので、ブログに寝言を失礼します。

スポンサーリンク

映画「STAND BY ME ドラえもん」概要

公式サイトによれば、「藤子・F・不二雄 生誕80周年記念大作」で「『ドラえもん』のはじまりと終わりの物語」だそう。

脚本・監督:山崎貴
監督:八木竜一

上記2名の監督が携わっています。

「懐かしくも新しいドラえもん」と、でかでかと書いてありました。

映画「STAND BY ME ドラえもん」を観た感想

ドラえもんは大好きで、「ワンニャン時空伝」までは何度も繰り返し観ていました。TV放送の大晦日スペシャルですら毎年ビデオに録って、何度も何度も。

のぶ代ドラの落ち着いた保護者感がたまらなく好きでした。原作とは雰囲気が違うのは承知しています。おそらく、わさびドラのほうが原作に近いわちゃわちゃ感があるのかと。ブラックさは全く足りないけれども。

本作は、子どもの頃に観た、いくつかの話が組み合わされていました。

「雪山のロマンス」や「のび太の結婚前夜」、ドラえもんが未来に帰る話「帰ってきたドラえもん」はよく覚えていますが、当時は泣けたのに本作を観ても瞳が潤むことすらなかったのです。

話の過程が改変されていたり、CGになったことによるドラえもんらしさの激減、自身が子どもの頃とは違うキャスト……。

正直、どれが原因かはわかりません。

私が成長してしまったからなのかとも考えましたが、おそらく当時の作品を観れば少しは涙する自信があります。思い出補正もあるのでしょうが、わさびドラになってから何作か映画は観ていますし、のぶ代時代程ではなくとも、それなりにうるっときたりしています。

本作の元となっている旧作の当時と今じゃ、世の中や自分の価値観も変わってしまいました。しかし、思い切って古い作風のままなら、昔の世の中の価値観を考慮して受け入れることが出来ます。ですが、この作品では拒絶反応がすごかったのです。

「雪山のロマンス」の改悪

「雪山のロマンス」は、しずかちゃんがのび太を結婚相手に選ぶ重要な話です。のぶ代ドラ、わさびドラともにアニメ化もされています。

簡単にまとめると、紆余曲折あって雪山で遭難してしまった大人時代のしずかちゃんを、子ども時代ののび太がタイム風呂敷で見た目だけ大人にして助けに良くも、逆に大人しずかちゃんに助けられるというお話。

この話における重要な点は、しずかちゃんがのび太を選んだ理由です。

しずかちゃんは、のび太があまりにもダメダメで危なっかしいため、「そばについててあげないとあぶなくて見てられないから」といって結婚を決めたのです。

しかし、「STAND BY ME ドラえもん」では確かにのび太はダメダメでしずかちゃんに迷惑をかけてしまうのですが、「そばについててあげないとあぶなくて見てられないから」というセリフはカットされ、「未来ののび太がしずかちゃんを助け出す」という変更がなされています。

「そばについててあげないとあぶなくて見てられないから」のセリフがカットされている代わりに、似たようなニュアンスのことは言われるのですが、そういう大事なシーンを変えちゃうのって単純に作品へのリスペクトが足りないですよね。

「帰ってきたドラえもん」の改悪

そもそも、「STAND BY ME ドラえもん」では、のび太とドラえもんの出会いからして改変されています。

「成し遂げプログラム」で設定された「のび太を幸せにする」ことを達成しない限り、未来に帰れないという設定。

もうこの時点でしらけちゃうのですが、この変更点が「帰ってきたドラえもん」をぶち壊します。。。

「のび太の結婚前夜」の後、のび太はドラえもんに対して「僕は幸せだ」と告げます。

すると、「成し遂げプログラム」のアナウンスが「成し遂げたから48時間以内に未来に帰れ」的なことを言ってきます。

そうです、帰る理由は「成し遂げプログラム」には逆らえないから。

未来に帰らなくちゃならない理由がプログラムって。

しかも、ドラえもんが未来に帰らなくてはならないことをのび太が知った後、ジャイアントの喧嘩とのシーンが……。

のぶ代ドラ時代の映画では、のび太は雨の中、ジャイアンの耳を引っ張りボロボロになりながらもジャイアンの戦意を喪失させるのです。そのシーンはただならぬ雰囲気です。

一方、「STAND BY ME ドラえもん」では、確かに喧嘩はするし、ジャイアンも逃げていくのですが、全然鬼気迫るものがないのです。

CGはボロボロなのですが、そうまでなる過程が軽く流されすぎていて、尺の都合とはいえここを軽く流してはいけなかったと思います。CGに頼り切っているようにも見えます。ボロボロにしておけば観客の同情を引けるだろうと……。

「STAND BY ME ドラえもん」は見た目だけ今風で中身は改悪

作中何度か、のび太がしずかちゃんに「君を幸せにする」と言っていたり、未来のしずかちゃんのお父さんがのび太君なら幸せにしてくれると言っていたりしますが、男性が女性を幸せにすることは昔の考え方。

のび太がしずかちゃんと結婚することが幸せというのも、まるで結婚がゴールかのような、結婚するのが当たり前のような価値観が見え隠れしている。

いや、昔の作品がもとになっているのだから、それらの価値観の古さ自体は良いのです。しかし、本作は妙に改変されているのが気になってしまいます。おそらく、この辺が公式ページに書いてあった「懐かしくも新しいドラえもん」というつもりなのでしょう。

ドラえもんが未来に帰る理由が「成し遂げプログラム」のせいというのは、様々な話を一本の映画にまとめるために無理やりねじ込んだ設定です。本当にそれ、だいぶ話変わっちゃうんだけどな……。

元の話は一つ一つ良い話だったのに、変に改変され圧縮されているせいか話の良さが伝わらないうえに、今風の見た目なのに中身の価値観が古いというアンバランスな感じ。

例えば、日曜夜のサザエさんがバリッバリのCGでうるさく動くが、波平やマスオの会社のデスクにはパソコンがなく、あくまで当時の時代設定や価値観のままで作るみたいな。

中途半端にいじくりまわすなら、ドラえもんで作る必要はなかったでしょ、と。

ウソ・エイト・オー・オー。正式な表記は覚えてないけど(調べたところ「ウソ800」嘘八百のもじり)、道具の名前だって憶えているくらい好きな話でした。ドラえもんが安心して未来へ帰るために、自力でジャイアンと大喧嘩する話だったのに。そこを軽く流しちゃならないのに、なんで無理やりつなげて1つの作品にしちゃったんだろう。

同じように子ども向けの番組で昔見ていたクレヨンしんちゃんなら、今でも映画館で新作映画を観るし、毎度泣いてるくらいなのに。

この作品、誰に向けて作ったの……?CGの習作ですかね?

見え透いた「感動の押し付け」

ちなみに本作の続編「STAND BY ME ドラえもん 2」で、「おばあちゃんの思い出」の話が出てくると聞き、絶対に観ないと決めました。旧作を真剣に見ていた人間には、妙な質感のCGも、大事なところを端折ってるくせに「泣けるでしょ?」という押し付けがましいところも気持ち悪いのです。

何が「ドラ泣き」ですか。ドラえもんを使って全く別の作品を作っておきながら。

旧作も原作も知らないとか、少ししか見てないとかいう人なら楽しめるかもしれません。でも、こんな継ぎ接ぎの総集編に余計な設定を生やした映画で喜んでる暇があったら、元になったお話を観てみることをおすすめします……。

さらに個人的な怒り

本作の特筆すべき点であるCGですが、原作のキャラデザを微妙に無視している感じが見苦しいです。ドラえもんって、マンガやアニメのようなのぺっとしたイラストだからこそ、映える作品なのだと実感しました。

CGにするにしても、中途半端に質感をリアルにしたりするとなんか馴染まなくなる。

そのうえ、これは原作やわさびドラではどうなのかは知らないのですが、ジャイ子ちゃんについて。のぶ代ドラ時代のジャイ子ちゃんって、確かに容姿はジャイアンにそっくりではあるのですが、もっとおしとやかだった覚えがあります。決して「STAND BY ME ドラえもん」の冒頭のような下品な笑い方などしなかったと思うのですが、どうでしょう。

私は原作もわさびドラもたまに見ますが、なによりのぶ代ドラのファンです。ゆえにジャイ子ちゃんのキャラクターを正確には把握できていないかもしれません。

しかし、のび太ってこんなにダメだったっけ?彼はみんなができるようなことは基本的にはできませんが、あやとりが上手だったり射的の腕は天才、それに奇抜な発想はピカイチだったはずです。

そんなのび太の良いところを見せず、ダメなところばかりを強調したこの作品で「ドラ泣き」なんてできないかなぁ。

せいぜい、大好きな「ドラえもん」という作品をぶっ壊された悲しみで泣くくらい。

本作を観ているときはドライアイを疑う程、目がカピカピに乾いていました。

映画「STAND BY ME ドラえもん」感想まとめ

まとめると、今までドラえもんを愛してきた人たちにはお勧めできない作品です。思い出を壊されるし、登場人物の良さも潰されている。

CGだけ今風の妙に質感のある見た目ですが、話は過去作の改悪ということで、「懐かしくも新しい」のではなく「懐かしい思い出を壊しながらも中身の価値観だけが古めかしい」中途半端な気持ち悪い感じなのです。

普通に、過去作を観たほうが楽しいし幸せです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました