鋼の錬金術師には、原作準拠の新アニメ(FULLMETAL ALCHEMIST)とは別に、「旧アニメ」「劇場版 シャンバラを征く者」「劇場版 嘆きの丘の聖なる星」という、原作から大きく外れた独自ストーリーの三部作がある。
今回はこの3作品を観て感じた「新アニメとの違い」と「共通するテーマ」をまとめる。旧アニメを観るべきか迷っている人の判断材料になれば幸いだ。
鋼の錬金術師の「旧アニメ」とは何か
「旧アニメ」は2003年に放送されたテレビシリーズで、原作のストックにアニメの制作進行が追いついたことをきっかけに、途中からアニメオリジナルの展開に切り替わった作品だ。
今回取り上げる3作品は以下の通り。
- 鋼の錬金術師(旧アニメ本編)
- 劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者
- 劇場版 鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星
原作・新アニメと世界観の根本設定(ホムンクルス誕生の経緯など)から異なるため、「別作品」として観るのが正しい心構えになる。
旧アニメ〜劇場版「シャンバラを征く者」:一貫したテーマは「不完全さ」
旧アニメの主人公、兄エドワード・エルリックと弟アルフォンス・エルリックは、亡くなった母にもう一度会うために「人体錬成」という錬金術最大の禁忌を犯す。その結果生まれてしまったのが、人間ではない生物「ホムンクルス」だ。
ホムンクルスは「賢者の石」に近い「赤い石」を食べることで人間に近い体を得られるが、魂がないためどうやっても人間にはなれない。そこで「賢者の石」があればホムンクルスも人間になれるという希望が生まれる。
ただし――本当にそれで人間と言えるのか。前者(人体錬成)は作り物の魂を持った生き物であり、後者(ホムンクルス+人間の魂)はホムンクルスの記憶・感情と、もとになった人間の魂の記憶・感情が混ざった生き物になる。魂ごと人造された存在も、別人の記憶や感情が混ざった存在も、「完全な一人の人間」とは言えないのではないか。
この問いかけが、旧アニメ全体を貫く重いテーマになっている。
旧アニメでは、この禁忌によって生まれてしまった不完全なホムンクルス「エンヴィー」が、2人の兄弟にとって別の意味で重要な存在になる点も見どころだ。
劇場版「シャンバラを征く者」は旧アニメ最終話の続きにあたる。賢者の石になったアルフォンスが、亡くなったエドワードを自らと引き換えに取り戻し、それを知ったエドワードもまた自らと引き換えにアルフォンスを取り戻す。エドワードは「門の向こう」の世界で、父ホーエンハイムのもとで暮らしていたようで、魂と体は分離しておらず奪われてもいない――つまり死んではいない、という描写がある。
映画冒頭では、旅の記憶を失いながらも錬金術の修行を始めたアルフォンスと、門の向こうの世界でホーエンハイムと暮らすエドワードが描かれる。エドワードは門の向こうのアルフォンスがロケット開発に関わっていることを知り、元の世界に戻る手がかりを得ようとする。そして、もともとホムンクルスだった龍「エンヴィー」が利用して開かれた門で元の世界のアルフォンスと再会するが、結局は開いてしまった門を閉じるために、兄弟そろって門の向こうの世界へエンディングを迎える。
一瞬でも元の世界で生身の体で兄弟が揃ったにもかかわらず、門の向こうの世界に行ってしまう結末は、あえて不完全な終わり方を選んでいるように感じた。
劇場版「嘆きの丘の聖なる星」は謎多きアルフォンス
「嘆きの丘の聖なる星」は、新アニメ(原作寄り)の後に公開された作品だ。ただし私は新アニメを未見のため、時系列やアルフォンスがなぜ謎のままなのか、兄弟がまだ体を取り戻す旅をしているのかは正直わかっていない。旧アニメ・旧劇場版とはまったくの別作品と理解した方がよさそうだ。
作風もかなりジュブナイル寄りで、正直「本当にこれは鋼の錬金術師なのだろうか」と自問自答し続けるような内容だった。新アニメの1話しか観ていないが、髪の毛の主線が黒ではなかったはずなので、作画も新アニメと違う可能性がある。
結末では、ミロスは滅亡を逃れ、新映画のヒロイン・ジュリアの兄は顔を取り戻し、ジュリアも兄の体を取り戻すために足を犠牲にしただけで一命を取り留めた。かろうじて残っていた兄の命をどうにかするところまではわかるが、「なぜ顔が戻ったのか」「ジュリアの足と引き換えなのか」「命は賢者の石の力なのか」は最後までわからなかった。
エドワードとアルフォンスはまだ体を取り戻す旅を続けている様子だが、新アニメのタイトルをちらっと見た印象では、二人の旅は終わっているように思えた。もしかすると、新アニメエンディングより前の話をオリジナルで作ったのかもしれない――原作者が関わっていないようなので、そういうことなのだろう。
とりあえず、混乱したのでおとなしく新アニメを観るか原作を読むことにする。新映画からはあまり強いメッセージやテーマを読み取れなかった、というのが正直な感想だ。
旧アニメ・新アニメ 早見表
| 項目 | 旧アニメ・旧劇場版(2003系) | 新アニメ(FULLMETAL ALCHEMIST) |
|---|---|---|
| 原作準拠 | × 独自展開 | ○ 原作に忠実 |
| テーマ | 「完全なものは存在しない」 | 原作ストーリーの完結 |
| ホムンクルスの位置づけ | 人体錬成の失敗体 | 賢者の石由来 |
| ラスト | 不完全・余韻を残す | 完結型 |
| おすすめ層 | 原作・新アニメ既視聴者 | 初見の人 |
初めて鋼の錬金術師に触れるなら新アニメがおすすめ。旧アニメは「もう一つの解釈」として、原作・新アニメを観たあとに補完的に楽しむのが一番しっくりくると思う。
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好きなキャラクターまとめ(旧アニメ版)
- アルフォンス・エルリック:兄より気弱なところも多いが、その分優しくて和む。芯の強いギャップも魅力。
- ロイ・マスタング:炎の錬金術師なのに雨の日は無能というギャップが好き。皮肉屋だけど人情深く、部下がついていきたくなる上司。
- ヒューズ中佐:旧アニメで途中退場したときはしばらく引きずるくらいショックだった。マスタングを昇格させるためホムンクルスの件を自分で調べようとした人情深さも印象的。
- アレックス・ルイ・アームストロング:見た目は筋肉バカだが、中身はヒューズの遺志を継ぐ人情家。錬金術も実力派で、キャラも強くてかっこいい。
まとめ:結局、旧アニメは観るべきか
旧アニメ・旧劇場版が一貫して伝えてくるのは「完全なものは存在しない」というテーマだ。どの登場人物も、どの結末も、どこか不完全さを残したまま終わる。それこそがこのシリーズの本質だと感じた。
原作や新アニメを観たことがある人にとっては、「もう一つの鋼の錬金術師」として観る価値は十分にある。逆に初見でどちらか一方だけ選ぶなら、新アニメから入るのが無難だ。
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