【感想】『カラフル』森絵都著:魂のホームステイで生前の罪を思い出せ

書評
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魂のホームステイって斬新な設定だなぁなんて思ったのですが、小説において斬新も何もないか、とも思いました。

仏教的に考えれば、輪廻のサイクルから外されるのって確か解脱でしたよね。解脱とは苦から逃れることであり、それは仏教の究極の到達点でもあるのかな。しかし、『カラフル』で輪廻のサイクルから外される理由は、生前に罪を犯したからだそう。仏教と異なった考え方ですね。

さて、そんな『カラフル』を読んで思ったことを書き残します。

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『カラフル』の書誌情報

  • 2007年9月10日 第1刷
  • 2010年9月20日 第18刷
  • 著者:森絵都
  • 発行所:文藝春秋

あらすじ

生前の罪により輪廻のサイクルから外されたぼくの魂が天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになる……。老若男女に読み継がれる不朽の名作。

『カラフル』裏表紙より

印象に残った箇所

そんなに長い小説ではないので、印象に残った箇所も少なめですが、記録。

 

今だからこそ価値のある体で、今の自分にこそ価値のあるものを手に入れる(p.88)

これはひろかのものの考え方ですね。彼女がやっていることは置いといて、考え方自体は共感しました。年齢や環境によって、自分に合うモノも変わってきてしまいますから、その時々の自分に合ったモノを手に入れたいですね。おばあさんになってから小学生時代に欲しかった一輪車とか手に入れても困っちゃいますもんね。

 

この地上ではだれもがだれかをちょっとずつ誤解したり、されたりしながら生きているのかもしれない(p.170)

何もかも理解することなどできませんが、自分から見えた他者の印象は、たくさんある中の一つの面に過ぎないのかもしれない、そもそも誤解かもしれない。このことを念頭に置いておく必要はありますよね。無暗に人を信じればいいわけではありませんが、無暗に勝手なイメージで失望する必要もないのでしょう。

 

この世でもあの世でも、人間も天使もみんなへんで、ふつうなんだ。頭おかしくて、狂ってて、それが普通なんだよ(p.186)

これは真の言葉ですが、同意見ですね。みんなそれぞれ変なんです。何処も変じゃない人なんていません。それが普通なんです。じゃなきゃ個性なんてもののない、つまらない世界になってしまう。

 

せいぜい数十年の人生。
長めのホームステイ。(p.224)

地上に生きる我々には、次の人生があるのかはわからないのですが、それでも長めのホームステイ程度の気持ちで気負わず楽しく生きたいな、と切実に思いました。

なんだかんだで、義務に追われて楽しいことに目を向ける余裕がなくなることが多く、今後の人生をどうしていくか改めて考えておきたいと思いました。雇用されて働くのは生きるためというよりも納税のためだな、と最近思うのです。会社員をしているうちはなかなか気づきにくいですが、会社が支払う給料は、その人が最低限暮らしていける程度でいいや、というのが本音でしょう。会社からすればせっせと働いてくれればそれだけで良いのですから。余暇とかどうでもいいのですよ、会社は。

ならば個人事業主?それもまた大変な面があるので、だからこそどう生きていくかは常に見直していきたいですね。

感想

世界はカラフルなのに、自分の偏見や思い込みで暗い色しか見えなくなることもあるのだと思った作品でした。

真はまさにそうで、色々な誤解が積み重なって、視界が真っ黒になってしまったのだと思います。

逆に世の中には徹底して綺麗なものしか見ない人もいますね。以前から不自然だなぁとか、都合がいいなぁなんて考えていました。例えば、世の中の暗い面をすべて無視して、こんなにも世界は素敵だ!とか言っている人。果たして、世界の一部分しか認めない姿勢で本当にこの世界の魅力に気付けるのか。

私は、暗い面もしっかりと見つめ、そのうえで自分の人生を楽しめるようにしていきたいです。この世界には、確かに悲しいことや辛いこと、どうしようもないことが沢山あるのです。それらをなかったことにすれば、人の悲しみや苦しみに寄り添うこともできないですし。

とはいえ、暗い面ばかり見つめていては、やがて自身がその暗さに飲み込まれてしまいますから、明るい面を見つめることも大事です。雨上がりの森の空気の良さ、好きな作品、人の優しさ。

『カラフル』は名作と言われていたので手に取りましたが、読書初心者にも汲み取りやすい文章で色々伝えてくれているな、と感じました。

ちょっと真が生意気なのが気になりますが、リアルな子どもなんてそんなものではありますね。

まとめ

読みやすいから高校生くらいにおすすめできる内容かな、と感じました。ちょうど真も高校受験を控えた身ですし。

分厚くないのですぐ読み切れますし、元気のないときにおすすめかな。

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